地域おこし協力隊のその後をどうするか ー地域雇用の課題

6 min readby FHL

地域に新しい人を呼び込む仕組みとして活用される地域おこし協力隊。起業や村内事業者への参画など、全国的に多様な形で制度が活用されています。

一方、現場からは、「人を呼べること」と「その人を地域で雇い続けられること」は別だという声も聞かれます。

制度の任期が終わった後、その人が地域で仕事を続けられる事業をつくれているか。人手不足を埋めるだけでは定着につながらない。協力隊の“その先”にある、地方の雇用とキャリアの課題を聞きました。

誰の困りごとか
地域おこし協力隊員と、受け入れる村内事業者
どこでの困りごとか
多様な協力隊制度を活用する岡山県西粟倉村
どんな困りごとか
任期終了後の雇用とキャリアを継続する課題

【お話を伺った方】

西粟倉村で宿泊・地域事業に携わる事業者。

【前提情報】

西粟倉村では、起業型、企業研修型など独自の地域おこし協力隊の仕組みを活用してきました。令和8年1月1日時点の隊員数は37人。

企業研修型では、任期終了後に受け入れ事業者で継続して雇用することが想定されています。

また2025年4月には、国の特定地域づくり事業協同組合制度を活用した「西粟倉事業協同組合」が設立されました。複数の事業者で働くマルチワークにより、地域の人手不足と安定雇用の両立を目指しています。

今回は、地域の人材受け入れや雇用に関わる立場から、地域おこし協力隊や、複数事業者をまたぐ働き方について話をお聞きしました。

インタビュー

「3年間いる」と「地域に定着する」は同じではない

Q. 地域おこし協力隊は、村ではどう受け止められていますか。

村に来てもらう入口としてすごく大きいと感じています。

西粟倉では、企業の中に入り、新しい事業や地域課題に取り組む企業研修型の協力隊の方も多いんです。制度があることで、村外の人が地域へ入るきっかけになっていると感じます。

一方で「制度の期間中に人がいることと、その後も地域で働き続けられることは、同じではない」とも感じています。

Q. 任期が終わった後、どんな課題があるのでしょうか。

企業研修方の協力隊の場合、活動している間に新しい事業を育て、その事業から人件費を出せるようになるのが我々としては理想なんです。

でも、3年でそこまで売上が立っていなければ、「残ってほしいけれど雇用できない」ということが起きます。
受け入れ事業者が、その人を自社のお金で雇い続けられる状態をつくれていないことあるんです。

Q. 隊員本人も、任期後のキャリア設計は重要です。

その通りです。ご本人としては3年間を一つの経験として、その後は別の地域へ行くという選択もあると思います。

一方で、西粟倉に残りたいという意思があるなら、3年目になって初めて「次どうしよう」と考えるのでは遅いんです。

今の会社で働き続けるのか、村内の別の仕事へ移るのか、自分で事業をつくるのか。本人のキャリアと、受け入れ事業者の経営を一緒に考えないといけないんです。

一社で一人を「一年中雇う」ことが難しい

Q. なぜ協力隊の任期後の雇用が難しくなりやすいのでしょうか。

村に仕事がないわけではないんです。でも、一社だけで一年中、一人分の仕事を安定して用意するのが難しいことは多いです。

宿なら繁忙期と閑散期がありますし、林業や農業にも季節があります。「この時期はすごく人が欲しい。でも別の時期はそこまでではない」という波があります。

そこに一人を正社員として雇い続けるとなると、事業者側には年間を通した売上が必要です。

Q. 西粟倉では、複数の事業者をまたいで働く仕組みも始まっていますね。

2025年に西粟倉事業協同組合ができて、複数の事業者で働く「マルチワーク」が始まっています。

例えば一社では一年分の仕事を用意できなくても、複数社の繁忙期を組み合わせれば、一人の仕事を一年分つくれる可能性があります。

組合が職員を雇い、地域の事業者へ派遣する。村全体で人材を支える「村の人事部」のような考え方です。

Q. 地域おこし協力隊とは、役割が違うのでしょうか。

その通りです。協力隊は地域へ人が入る入口として強い。一方、マルチワークは通年の仕事をつくる仕組みとして意味があります。

協力隊として地域へ来た方が、その後マルチワークや村内企業、起業などへ進めると、選択肢が増えます。

「人を呼ぶ」から「地域でキャリアをつくる」へ

Q. 受け入れ事業者側では、どんな準備が必要だと思いますか。

採用するときから、任期後までの事業計画を持っておくことが大事だと感じます。

3年後に何の事業がどこまで育っていれば雇えるのか。本人には何を任せ、どんなスキルを身につけてもらうのか。途中で計画通りにいかなければ、いつ修正するのか。

「協力隊が来てから考える」ではなく、人と事業の成長を一緒に設計する必要があります。

Q. 外部の企業やスタートアップが関わる余地はありますか。

採用サービスだけではなく、その後を支える仕組みには余地があると思います。

村内にどんな仕事があり、どの季節に人が必要かを可視化する。複数事業者の仕事を組み合わせる。本人が身につけたスキルや実績を蓄積して、次の雇用や起業につなげる。

一つの会社の人事ではなく、「地域全体の人事」として見ると、まだ整えられる部分はあります。

Q. 最終的には、どんな状態が理想でしょうか。

制度が終わるから地域との関係も終わる、という状態を減らしたいと考えています。残りたい人が「仕事がないから出る」しかない状態はもったいないと思うんです。

人を呼ぶ施策、住宅、地域企業の事業づくり、マルチワーク、起業支援がつながり、その人が次のキャリアを選べる状態になれば、本当の定着に近づくと思います。

今回の課題のまとめ

  • 協力隊で人を呼べても、任期後の雇用は自動では続かない。受け入れ事業者が、人件費を支えられる事業を育てる必要があります。
  • 小規模事業者では、一社で通年雇用をつくりにくい。複数企業の仕事を組み合わせるマルチワークが一つの選択肢になっています。
  • 課題は「採用」だけではなく、任期後まで含めたキャリア設計。地域全体で人と仕事をつなぐ仕組みをつくる余地があります。

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